榎田尤利さんの交渉人シリーズ全7冊を読破しました。一応これで一段落で、完結というよりまだ出版される可能性があるようです。
主人公の芽吹は綺麗な顔の交渉人。
ネゴシエーターって職業で相手と話し合いで時間や問題を和解させる職業です。弁護士とも探偵でもない。
もともとすんなり司法試験に受かったエリートで検事・弁護士を経て俗っぽい交渉人を始めた男。頭は切れるがちょっとゆるいキャラです。
攻め役の兵頭はガテン系クールビューティー。やくざで専務という役職。高校の時の芽吹の後輩で芽吹ラブ。
シャープな色男はやくざでも知能派で仕事ぶりも配下から慕われる兄貴。
いろいろ事件を乗り越えてお互いなくてはならない存在までゴールインするわけだけど、こうして文字にするとよくあるお話。
だけど読むほどにやっかいな己の性格に振り回されながらどんなにか相手を思い、無理や我慢をしても信じて勝ち取る愛がいじらしいんです。
判っていながら罠にはまり、別れたふりをしながら他の男とのセックスを見せつけ合う。その時は自分の気持ちを殺して平常を装うけど実は体の中で血を流す苦痛をかみしめるような男の我慢。それだけお互い惹かれているってことがよく分かる。
30代前半の大人の男の愛し方はけして甘くはなく、社会の責任に耐えながらも隙間を縫ってじつは心は束縛している強い愛がいい。
時折恥ずかしいような甘えたことをしらっという兵頭の純情。
大っ嫌いなやくざを心底愛してしまい我ながらがっくしする芽吹だが笑って愛を認めざるを得ない状況にけっこう満足していたり。
お互いこの野郎と思いながらも添い遂げるのだろうなとほっとする関係です。
文章もなかなかコミカルな所やうまく言い当てる心理状況などで、どんどん進みます。
読む前は、ちょっと暗めの人間関係に飛び付きが悪かったのだけど、これも捨てられない本になりました。
奈良千春さんの達者なイラストがヤクザがらみの話をスマートに描いてくれてます。奈良さんでなかったら読まなかったのだろう作者様には申し訳ない。いや、作者を絵師の見事な連携プレーがこの本を買わせたのだと思います。
芽吹ぞっこんの美丈夫兵頭の登場する度オーラとフェロモン出しまくりに期待して、またの出版を待ちに待っております。