再び遠野春日さんの茅島氏シリーズです。
小説「茅島氏の優雅な生活」3巻
コミック版(漫画:麻々原絵里依)3巻
コミックは小説をそのままコミック化したものです。
小説の挿絵が日高 ショーコさんなのでイメージがだいぶ変わります。
基本的なお話は「優雅な生活」で、プロポーズ編、英国旅行編となります。
主役の美貌の青年茅島氏は名声もある莫大な資産家で、両親を亡くして孤独ではあるがあまり人間味のない性格のためともすればボケキャラと紙一重。思考も感情も凡人ではなく高貴な環境による一般人にはない人生観の持ち主である。
一挙一動が優雅で嫌味が無く、独特な口調やストレートな物言いが何故か憎めず、かえって興味をそそるのか周りから意外にも好かれている。普通なら嫌悪感を持ってしまう態度なのに愛らしさが人を呼び、特別に取っておきたい美味しいお菓子のような存在なのだろう。
対する茅島氏の愛する青年は東大法学部もストレートに入ったのを捨ててまで庭師になった。どうしてかというのは小説を読んでいただきたい。要するにただの庭師にしておくにはもったいない高学歴、高身長の男らしいゲイの美青年。
ことの始まりは茅島氏は屋敷の中から広い庭園の世話をする健康的で男としてのガタイのいい美青年を見かけて、だんだん惹かれていったのだろう。
ある日社交場で茅島氏は友人の恋愛観を聞いてそれを実戦し、ハンサムな庭師の家に「好きだ」と告白に行く。しかもどしゃぶりの雨の中。本当に好きなのにゲイの庭師にとってはおぼっちゃまの気まぐれにしか思えない。
しかしそれが戯れでも放っておけなくなりいつしか本気になっていく。茅島氏というのはこいつは放っては置けないと思わせるタイプの人間なのが、周りから気に掛けられる得を持っている。
孤独で人として無味無臭の茅島氏の屋敷の執事たちは、むしろ庭師との恋愛を応援しているのが微笑ましい。
感情をうまく表現できないなりに必死に庭師を愛しているいたいけさ。そして庭師のいつかはこの恋愛は散るだろうと思いながら恋する切なさ。ふつふつと燃える青い禁断の男心が美しい。
セックスにも茅島氏は素直で、おとなのオモチャを使ってのセックスも恋人が喜べば自分も気持ちがいいと思う育ちの良さが面白い。
この浮世離れしたラブロマンスが心を休ませてくれる、そんなお話でした。