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やっと陰陽師

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食わず嫌いで読まなかった本を読んで心改めた本。

BANANA FISH:とにかく評判はいいのだけど絵が馴染めなかった
ベルバラ:上記に同じ。とくに男性でもあの体の細さ!
陰陽師(岡野玲子):やはり絵が馴染めなかった。クロッキーのような漫画っぽくない絵。

上記コミックに平謝りいたします。本が発売されてから数年、いや数十年だってからやっと最近読みました。一度は読まなければと思っただけでけして読みたかった漫画じゃなかったのです。しかし裏切られたなー、いい意味で。自分の凡人さにショック。
絵は好き嫌いや流行りがあるので何がいいとは言えないのですが、読めば絵もセットでよくなります。

この一週間でやっと読み始め、土日でほぼ全巻読破したのは陰陽師。いろいろな不思議な評判があって、後半は夢枕獏さんの『陰陽師』から道が外れ、独自路線で地球物語になってしまったとうこと。平安時代から古代エジプトまで飛びます。
エ?エジプトぉ~。
そう後半は良くも悪くもあくまで岡野玲子版陰陽師。岡野玲子版と付けるだけ良心的ともいううわさもあるこの漫画。8巻目くらいまでは鬼退治のような確かに夢枕さんのお話だったのですけどね。
自分はどっち派でもないので頭をニュートラルにして読むことが出来ました。自分が【面白】ければ問題ないと思いますが、どうなんでしょう。

確かにほとんど陰陽道の解説が多く、晴明があまりに大き過ぎて独り歩きしていますが、それがこのコミックなのだと思う。理(ことわり)のスーパーヒーロー安倍晴明。
読み終わってから理の地球旅行をして、なんかちぃっちゃい自分に疲れたという疲労感。
能面の晴明なのに居るとほっとする。
けして浮ついた気持ちでは読んじゃいけない本です。でないとちっとも面白くないし解らない。
落ち着いたらもう一度読まないと本当の面白みは出ないのでまた頑張っちゃいます。ほんと頑張って読む本です。

漫画の描写は独特で、「漫画」以上のため馴染めない方もいると思います。トーンを酷使してイマジネーションを表現しているのでシロクロはっきりして頂戴の好きな方には眼精疲労起こしそうです。
個人的には面白い描画でとても参考になりました。アシスタントあっての技ですね。【陰陽師コミック化プロジェクト】の大きな壁に圧倒され、漫画の可能性を見させてもらいました。

やはり想像をふくらます以前に基本が、たとえばデッサンとか、しっかり持ってないと違和感だらけになりますよね。それ、胸が痛いです。
陰陽師自体にはそれほど興味はないのだけど岡野さんの晴明はとても興味あるキャラになりました。
ちょっと辛い時あのアルカイックな微笑みを思い出すと強くなれるような気がする。これで強くなれたら漫画ってすごいんだけどね。

とにかく分厚い全13巻のあと2巻の続編があって晴明の息子の話しになってます。【陰陽師 玉手匣】ですが晴明は死んだわけではないようです。ヒトでもないみたいですが。
もちろん早速買いでしょ。

SASRAという旅へ

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人気小説家集団「Unit Vanilla」のSASRAシリーズ4巻です。

罪ある恋人たちの輪廻転生の物語。
展開としては1巻で現代の恋人たちの出会いと、物語の原因となる古代エジプト王国の王子と神官の物語。
王子と神官は神の声の代理人である少年ティティに悪気があったわけではないのだが罪を着せられて不運の結末となる。
この少年の罪の償いは不老不死と声を出せない、食べられないという苦行で未来へと旅を続けること。そして罪をかぶりながら転生する恋人たちを救うこと。
恋人たちは前世を忘れて何度も出会うこととなり、唯一恋人たちと少年を繋げるのはエジプト時代に問題となったラピスラズリで後世は指輪となって3人を引き合わせる。

1巻は現代から離れ、古代エジプトに飛ぶ。
それと書き下ろしの中国編。かんざし職人と出世した幼馴染みの恋物語。

2巻はローマ軍の騎士と大敗した敵国の戦士が奴隷剣闘士としコロセウムで戦いながら惹かれあう。
次は美丈夫な盗賊と見目麗しい貴族の悲恋。

3巻はインカ帝国の通訳と捕虜となった美貌の貴族。
そして江戸時代は貧乏武士と将軍の落し種の仮面の少年の物語。

4巻は大正ロマンの時代からやっと現代に戻り大団円となる。
不時着した砂漠で幻の古代エジプト時代の宮殿でティティに導かれ罪の償いをし、ティティもアメン神に許されて昇天していった。
さて現代まで続いた恋人たちは何度も出会い、何度も悲恋を繰り返す前世を確認しめでたしめでたしに終わる。

途中、全てハッピーに終わることのない話しに、どれも死なせたくないキャラゆえ切なくなる。BLに於いて死ネタはご法度というものの、それゆえに彼らの恋に対して執着が出てきてしまう。
その切なさのストレスがグランドフィナーレで「そろそろ一緒に住むか」という初めて実る恋に感動します。
もしかしたら呪われた恋つづりはこの現代編で大往生となるのだろう。満たされない救われない叶わないの表れが転生だとしたら、もう”生き返らない”のが恋人たちのゴールであれば喜ぶべきことだと思う。

同じくUnit Vanillaのアーサーズ・ガーディアンシリーズは少しコミカルでこれと対照的だ。自分はそれでも両方欠かせない好きなシリーズです。
SASRAとは流離うから来てるのだろうか。
読み終えて旅をしたなーって感じ。大満足です。

さてイラストは大好きな円陣闇丸さん。
もう絵もいいとどんどん話しに夢中になりますね。ほんとに色気があっていいです。

茅島氏の優雅な生活

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再び遠野春日さんの茅島氏シリーズです。
小説「茅島氏の優雅な生活」3巻
コミック版(漫画:麻々原絵里依)3巻

コミックは小説をそのままコミック化したものです。
小説の挿絵が日高 ショーコさんなのでイメージがだいぶ変わります。
基本的なお話は「優雅な生活」で、プロポーズ編、英国旅行編となります。

主役の美貌の青年茅島氏は名声もある莫大な資産家で、両親を亡くして孤独ではあるがあまり人間味のない性格のためともすればボケキャラと紙一重。思考も感情も凡人ではなく高貴な環境による一般人にはない人生観の持ち主である。
一挙一動が優雅で嫌味が無く、独特な口調やストレートな物言いが何故か憎めず、かえって興味をそそるのか周りから意外にも好かれている。普通なら嫌悪感を持ってしまう態度なのに愛らしさが人を呼び、特別に取っておきたい美味しいお菓子のような存在なのだろう。
対する茅島氏の愛する青年は東大法学部もストレートに入ったのを捨ててまで庭師になった。どうしてかというのは小説を読んでいただきたい。要するにただの庭師にしておくにはもったいない高学歴、高身長の男らしいゲイの美青年。

ことの始まりは茅島氏は屋敷の中から広い庭園の世話をする健康的で男としてのガタイのいい美青年を見かけて、だんだん惹かれていったのだろう。

ある日社交場で茅島氏は友人の恋愛観を聞いてそれを実戦し、ハンサムな庭師の家に「好きだ」と告白に行く。しかもどしゃぶりの雨の中。本当に好きなのにゲイの庭師にとってはおぼっちゃまの気まぐれにしか思えない。
しかしそれが戯れでも放っておけなくなりいつしか本気になっていく。茅島氏というのはこいつは放っては置けないと思わせるタイプの人間なのが、周りから気に掛けられる得を持っている。
孤独で人として無味無臭の茅島氏の屋敷の執事たちは、むしろ庭師との恋愛を応援しているのが微笑ましい。

感情をうまく表現できないなりに必死に庭師を愛しているいたいけさ。そして庭師のいつかはこの恋愛は散るだろうと思いながら恋する切なさ。ふつふつと燃える青い禁断の男心が美しい。
セックスにも茅島氏は素直で、おとなのオモチャを使ってのセックスも恋人が喜べば自分も気持ちがいいと思う育ちの良さが面白い。

この浮世離れしたラブロマンスが心を休ませてくれる、そんなお話でした。

交渉人シリーズ

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榎田尤利さんの交渉人シリーズ全7冊を読破しました。一応これで一段落で、完結というよりまだ出版される可能性があるようです。

主人公の芽吹は綺麗な顔の交渉人。
ネゴシエーターって職業で相手と話し合いで時間や問題を和解させる職業です。弁護士とも探偵でもない。
もともとすんなり司法試験に受かったエリートで検事・弁護士を経て俗っぽい交渉人を始めた男。頭は切れるがちょっとゆるいキャラです。

攻め役の兵頭はガテン系クールビューティー。やくざで専務という役職。高校の時の芽吹の後輩で芽吹ラブ。
シャープな色男はやくざでも知能派で仕事ぶりも配下から慕われる兄貴。

いろいろ事件を乗り越えてお互いなくてはならない存在までゴールインするわけだけど、こうして文字にするとよくあるお話。
だけど読むほどにやっかいな己の性格に振り回されながらどんなにか相手を思い、無理や我慢をしても信じて勝ち取る愛がいじらしいんです。

判っていながら罠にはまり、別れたふりをしながら他の男とのセックスを見せつけ合う。その時は自分の気持ちを殺して平常を装うけど実は体の中で血を流す苦痛をかみしめるような男の我慢。それだけお互い惹かれているってことがよく分かる。

30代前半の大人の男の愛し方はけして甘くはなく、社会の責任に耐えながらも隙間を縫ってじつは心は束縛している強い愛がいい。
時折恥ずかしいような甘えたことをしらっという兵頭の純情。
大っ嫌いなやくざを心底愛してしまい我ながらがっくしする芽吹だが笑って愛を認めざるを得ない状況にけっこう満足していたり。
お互いこの野郎と思いながらも添い遂げるのだろうなとほっとする関係です。

文章もなかなかコミカルな所やうまく言い当てる心理状況などで、どんどん進みます。
読む前は、ちょっと暗めの人間関係に飛び付きが悪かったのだけど、これも捨てられない本になりました。
奈良千春さんの達者なイラストがヤクザがらみの話をスマートに描いてくれてます。奈良さんでなかったら読まなかったのだろう作者様には申し訳ない。いや、作者を絵師の見事な連携プレーがこの本を買わせたのだと思います。
芽吹ぞっこんの美丈夫兵頭の登場する度オーラとフェロモン出しまくりに期待して、またの出版を待ちに待っております。

当たりの平安物

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久々に時代物のBLを読みました。
買ってからなかなか時代物の気持ちになれなくてしばらく放置していたのですが、読めばやっぱり面白い。
ネタバレになってしまうので詳しくは避けますが入門くらいのコメントを書きます。
佐々成美さんのイラストは胸板のしっかりした平安貴族がかっこいい。ぬしよ、鍛えてるな。キャー、いい。

「姫君の輿入れ」は左大臣家の息子挟霧(さぎり)が故あって女装して育ち、右大臣方の貴公子(光源氏に例えられるほどの地位と美丈夫)実親に夜這いされて次第に惹かれていく。実親は挟霧の平らな胸にびっくり、でも美少年と確認すると秘密を盾に猛アタック。挟霧ははじめは嫌々ながらの女と偽ったままの輿入れだったが実親の深い愛情に包まれ、だんだん本来の少年の姿に戻って愛される。
挟霧が健気で、最初は女装かよ!と思ってがっかりしたもののだんだん男の子に戻るが良い。途中で実親に災難が降りかかりますがなんのそのご安心ください。とにかく実親は平安時代のスーパー美男子で読みすすめるほどに惚れてしまいます。

「貴公子の求婚」は輿入れに登場する実親の友人と嵯峨野に隠居した貴公子のラブロマンス。さえない朝家に実親も認めるほど立派な貴公子との組み合わせは一味切なさがあります。貴公子は蘇芳と名を偽り身分を隠しつつも朝家に本気になっていく気持ちにときめいてしまいます。けじめの付け方が大胆でドキドキしますよ。
もう興奮して後半一気に読んでしまった。

お話の中にこの時代の描写が詳しく書かれており風俗を知るのも面白いです。あくまでも歴史書ではないので平安風として読んでくださいとは、著者の和泉桂さんも言う所であります。
某TV局の清盛のように平安時代は判りにくいということですが、あの香を焚き染めた優雅なラブロマンスはキリキリした脳がほっと一息します。貴族という甘美な言葉に酔います。
実親や蘇芳に脳内を食い散らかせられる快感に、ただ今時代を旅する楽しさに浸ってます。

魔王クロム

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再び琥狗ハヤテさんのコミック紹介です。
「魔王の甘い契約」の表紙を見るとまあまあって感じですが、中身の方が断然イイです。
よく表紙にだまされて買ったはいいけど中身がスカの経験があるかと思いますが、これは裏切りません。
とあるケーキ屋さんに居候するクロムという魔王とパティシエの契約という名のセックス?ありのBLです。
魔王が住み着いた理由というのが人情味(?)があり、とんでもない姿に変身するのに、厚い胸に抱かれたくなる魔王が魅力的なんです。受けのパティシエ亮の普通っぽい可愛さもいい。
ケーキ好きの変な魔王が実は深い愛情を持っていたり、2人の仲を応援する亮のおばあちゃんも微笑ましい。
読んでよかったなと思わせるコミックでした。
他に社会人もの2作品が入っていてそれも簡潔ですがほのぼのします。
それにしても相変わらず裸体が色っぽくて脱いだだけでもどきどきしてしまいます。
ハヤテさんのコミックは少ないのでもっとご本人の作品を描いて欲しいと願ってます。

新規惚れ込みコミック

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今日は朱鱶マサムネさんの『ネリヤカナヤ』というコミックです。
水滸伝を題材にマサムネさんがオリジナルに仕上げて同人誌で丁寧に創っていらっしゃいます。
じつはこの方は商業誌では琥狗ハヤテという名前で活躍しており、今月発売するコーエーゲーム『下天の華』のキャラデザを担当されています。もともとはBL畑の方なのにこのゲームはNLのため、そのせいか綺麗なのはいいけどハヤテさんの意図とは違う方向を感じます。でもゲームの信長がやたらかっこいい(画像入れておきます)。 

さてネリヤカナヤとは奄美の伝説で海の彼方にあるネリヤカナヤと呼ばれる楽園を指すようです。それと水滸伝の繋がりはわからないけど、そこがコミックの主人公である青年の林冲と魯智深の理想郷なのかも。
コミックは直接的にBL表現ないのだけど義兄弟という設定で遠まわしな恋愛を感じるのはマサムネさんだからでしょうか。
中国武侠の世界では義兄弟と言っても中には琴友といって肉体関係まで結ぶ習慣もあります。そんな匂いを感じる2人です。

琥狗ハヤテさんとして商業誌はいろいろありますがどれもリアルなBLが新鮮です。受けもとことん男ノコので、男同士っていいなと思わせる。構成もシリアスとコミカルがいい具合に混ざり合って飽きさせませんね。
体がまたいい。細マッチョに程よく付いた膨らみがやたら色っぽい曲線を描いています。大胸筋の隆起が美しい。
それにつけても絵が上手いです。ほんとに勉強になる。

YEBISUセレブリティーズ

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小説は岩本薫さん。
挿絵とコミックは不破真理さん。
小説とコミックの2本立て発刊されています。

恵比寿ガーデンプレイスの近くに構えるデザインオフィスにからむ男たちのお話。社員になるにはスキルの他容姿と身だしなみも必須条件。

自分のお好みキャラはオーナーの大城さんで器量、育ちの良さ、トップとしての貫禄が、読んでいて安心感に浸れます。ただ小説ではとくに恋愛絡みの登場が少なくてやきもきしましたが、最後の巻でやっとメインで登場し待たせられました。でもコミックではそこらへんが取り上げられて手満足です。大会社社長の父親との因縁等はおぼっちゃまを感じます。

登場人物はビジュアルデザイナー、クライアントのイタリアのインテリアメーカーのエグゼクティブ、DIESELのようなファッションブランドのオーナーデザイナー、パリコレのモデルなど煌めく職業が所狭し。
自分には恵比寿よりも南青山の裏にあるアートな街を浮かべますがそういうおしゃれな環境気持ちいい。

主に小説では元プレイボーイでやんちゃな久家と真面目な益永の出番が多く、久家のオフィスでもいちゃいちゃぶりはやりすぎ感ありでした。女の子相手じゃないんだからもう少しリアルっぽい方がかっこよくないかい?

これは個人的にデザインオフィスというのが身近で、社内シーンではどうしても現実に戻されちゃうのかな。
人や仕事についても小説と現実の違いを感じ、オフィスの設定条件が同じであっても近過ぎてつい冷めている。もちろんこの小説のせいじゃなくて、知らない世界の方が想像逞しくできるんですね。

しかし岩本薫さんといえば【ロッセリーニ家の息子】シリーズですよ。やはりクォリティーとしてはロッセリ-ニを越えられないエビスたちでしたが、読み終えると愛しいキャラたちなので我が愛蔵書は増えるばかりなり。

大城かっこいいぞ~。
岩本さん、もっと前面配置で是非。